第3章 6) 身八つ口 (男の着物と女の着物)

 日本舞踊の稽古は、浴衣に角帯を締め、白足袋を履いて踊ります。実を言うと、僕は日舞を習い始めるまで、まともに着物を着た事がありませんでした。浴衣は着た事があっても兵児帯だけ。角帯の締め方から勉強です。浴衣のたたみかたも覚えました。着物と浴衣は材質が違うだけで、基本的には同じ形であることも知りました。

 踊っていて、不思議なことに気が付きました。先生はふわりと腕を回して、袂を軽く手にもてるのに、僕にはどうしても出来ないのです。でもそれは、僕のせいではなく、男仕立てと女仕立ての着物の違いであることが判りました。袂の長さは男も女も同じなのですが、女の着物は腋の下が開いています。身八つ口というのだそうですが、男の着物にはそれがありません。その切れ目の分だけ、袂を手首のほうに寄せることが出来るので、先生はスムースに袂が取れるのですが、腋のあいてない男の着物を着ている僕には、袂が取れなかったのです。

 着物の腋の切れ目は、蒸し暑い日本で、湿気をのがす為だと聞いたことがありますが、それなら男の着物にも、切れ目があっていいのではないでしょうか。暑くなったら、男は片肌脱いで、いなせにすればいいから、切れ目は必要ないという説もありますが、ちょっと眉唾です。

 身八つ口は、「赤ちやんにお乳を上げるための工夫だ」と言う話を聞きました。でもこれも眉唾。おばあちゃんの着物にも、娘さんの着物にも、身八つ口はありますよね。

 この切れ目は、此処から手を入れて、おはしょり(着物のたくしあげ)を調整するためという説明もありますが、本当はもっと別の意味があるのではないかと思います。

 女性が手を上げたときには、身八つ口を通して、白い肌がちらちらと見えます。ミニスカートと同じで、身八つ口は男性を誘惑するための工夫ではないかと思います。それなら、男の着物に身八つ口のない理由が良くわかります。また、女性を後ろから軽く抱きしめて、身八つ口から手を入れ、乳房を刺激するには、非常に便利な仕組みです。

 先生によると、着物を着て電車のつり革につかまるときには、必ず反対の手で、袂を掴むのだそうです。「見られる状態に仕組んでおきながら、隠すしぐさでちらちらと見せる」、これは、今も昔も変わらぬ女の色気のようです。こんなことを考えながらの日本舞踊。邪道かな。

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この記事へのコメント

ネズミ色の猫
2020年05月06日 18:15
 2年ぶりにお邪魔いたします。
 人形(にんぎょう)縫いで袖付けも長い男物。袖付けや脇縫いに無理がかかって肩肘が思うように動いてくれない、という感想の切実さが伝わってきますね。もう少し身幅の大きいものをお召しになると両脇に余裕が確保でき、運動性の向上も図れそうな気がします。

*前回「抜き衣紋」で文章が二重投稿になってしまいました。あらためてお詫び申し上げます。

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