若冲(1)拓版画

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写真は平成十年の国際文通週間の切手。若冲の拓版画である。浮世絵である江戸の版画と違って、若冲の拓版画は友禅染めや蒔絵に見られる技法を駆使している。江戸の版画は、まず版木に色を置いて、その上に紙を置き、上からバレンでこすって色を紙に写す方式だが、若冲の拓版画は、拓本を採る時のように、濡らした紙を版木に貼り付け、上から墨をつけたタンポでたたく。その結果、バックの黒が、漆のような綺麗な光沢の色になっている。また色付けは、友禅染の型紙を使う方式が使われており、霧吹きの技法も使われている。でも残念ながら色つきの拓版画は、この切手の3種類を含む6種類しかない。

あとは拓本スタイルの植物図鑑ともいえる「玄圃揺華」(天国の花園の意味)や、淀川下りを画いた絵巻「乗興船」が知られている。黒をバックに、白く植物や景色の浮かぶ拓版画は、独特な趣がある。若冲と言う画家は、錦小路の青物問屋の楽隠居の趣味。狩野派の絵師や、蒔絵や友禅染の絵師達にも、自由に教えを請い、相国寺などの禅寺に出入りして中国絵画を模写し、それに身近にある野菜や鶏を写生して自分の絵にしている。

ある日、場末の古本屋で見つけたのが、瑠璃書房から昭和56年に出版された『若冲の拓版画』。この本の外箱の鉢巻には、「モノクロ版画の最高峰!異色の園芸植物図鑑!わが国随一の華麗濃密な花鳥画の鬼才・若冲が、今尚斬新なデザイン感覚、空前絶後といわれる拓摺技法を駆使して作り上げた、幻の花卉・蔬菜・鳥虫詩画冊、及び、唯一の山水図鑑の全内容を、棋界の第一人による、技法と全植物84種の解説、大典禅師の題詩の訳を付して始めて公開する。」とある。まだ若冲の人気がでる前だったので、定価が5800円の本を1500円で買った。でも現在は1万円くらいの値が出ている。この本には、148ページの図版のほかに、版画家の徳力富吉郎氏の「拓本摺り技法」、前川文雄氏の「若冲画冊の植物」、山内長三氏の「大典禅師の題詩」の3解説と、山之内氏の「若冲新論」があり、ゆっくりと見ごたえのあるものになっている。


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