若冲(4)展覧会の思い出

 4月7日(日)迄、上野の東京都美術館で「奇想の絵画展」が開かれている。岩佐又兵衛、狩野山雪、伊藤若冲、曽我蕭白、長沢芦雪、歌川国芳に、白隠慧鶴、鈴木其一を加えた8人の代表作が一堂に会するという。歩ければ是非行きたいところだが、右半身麻痺のこの身体では難しい。脳出血で倒れる前に、足繁く美術館に通っておいて良かったなと思う。

 この展覧会のように、江戸時代のユニークな絵画を見直そうという動きは、30年前にもあった。1990年(平成2年)に京都国立博物館で行われた「18世紀の日本美術-葛藤する美意識」展は伊藤若冲、曽我蕭白などの絵画をはじめ、小川破笠の細工、その背景である西陣織のデザインなど、非常に幅広い充実した展示だったが、人気はイマイチ。閑散とした博物館で、ゆっくり鑑賞できた。この展覧会で、僕は若冲を知り、ファンになった。手元にある芸術新潮1990年5月号「江戸の奇体美」は、この展覧会を特集している。

画像 現在のように美術展覧会がブームになったのは最近のこと。文化庁の肝いりで、京都国立博物館で行われた、2000年秋の「若冲没後200年を記念展」あたりが、そのブームのその発端らしい。この時は、上桂の家から、自転車で博物館に行き、門の前に自転車を放置して、若冲展を見た。あの頃はまだ京都ものんびりしていた。この時に買い求めた展覧会のカタログは、A4版400ページほどある分厚いもので、たったの2000円。若冲に関する定本といっても恥ずかしくない立派な本である。現在では2-3倍のプレミアが付いているらしい。展覧会の入場料も840円。あの頃に比べ、消費者物価指数は変わらないのに、展覧会や舞台の入場料は2倍以上になっている。美術館や舞台の入場料の安いヨーロッパに比べると、日本の入場料は、異常に高い。日本って、文化の後進国だなあと思う。

 江戸時代の若冲は、目立たない画家だったと思われているが、決してそうではない。隠居の道楽で、絵を売る必要がなくても、彼の絵を欲しがる人は沢山いた。手元にある芸術新潮の2000年11月の若冲特集号によると、若冲60歳当時に刊行された「平安人物誌」には、現存画家として、応挙に次いで、若冲が挙げられ、その後に池大雅、与謝蕪村が続いていると言う。ただ江戸時代の絵画は、限られた豊かな階層のものであって、現在のように、大衆の趣味にはなっていない。

 2016年に東京都美術館で行われた若冲展では、パートナーは2時間も並んだとか。僕はもうその時、右半身麻痺だったので、行列をテレビで見ていたが、世の中、ブームとは恐ろしい。こんなことは、僕の時代にはなかった。

この記事へのコメント

老人クラブ員
2019年05月15日 17:59
お目の高そうな方が紹介されているので「若冲没後200年を記念展」を古書ネットで買いました。送料込みで最安値が2850円でした。とても良いです。ありがとうございました。3月末で更新が止まっているのがきにかかります。ネット環境が変化してきてYahoo BLOG、ゲオシティなど次々閉鎖されたりその発表もあり、貴重な記録にアクセスできなくなるケースが最近増えているように感じます。

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